世界51位の新聞大国

Tshibayama2006-10-28

発行部数はギネスブックなのに

 国際機関「国境なき記者団」が発表した今年のメディア・ランキングで、日本は51位です。これは各国の情報の透明度、言論の自由度や民主主義の成熟度をはかる尺度です。
 上位には、フィンランドアイルランド、オランダ、ノルウェー、スイスなどが入っています。
 日本は世界一の新聞大国です。発行部数はギネスブックに載るほど、ダントツで、第二位の米国を大きく引き離しています。特に全国紙は、スーパータンカーに喩えられる巨大さを誇っています。
 読売新聞1000万部に対し、米国のニューヨークタイムズは、100万部そこそこです。米国の大新聞は、日本の地方紙並の発行部数しかもっていません。発行部数がやたらに多くて、自由度がないのは、共産主義国の新聞と同様の統制された新聞ということにになります
 言論の自由度ランキングで、世界168ヵ国中、51位ということは、言論後進国といえます。昨年は37位でしたが、このところランクはどんどん落下しています。
 韓国は31位で、日本より上です。日本と同等の国は、チリ、ドミニカ、ボツワナクロアチア、トンガなどです。

 [写真は,小生の新刊『日本型メディアシステムの興亡ーー瓦版からブログまで』(ミネルヴァ書房)です。ご参照ください。]
国境なき記者団」の格付けなど問題外、という新聞人もいます。どこの馬の骨かわからんNGO組織のランクなんて信じられるか、というわけです。日本の新聞人は権威を好みます。
 しかし北朝鮮が最下位という評価は、誰しも納得できますから、この評価は世界には通用します。
 日本の評価が低い理由の第一は、「記者クラブ・システム」です。北朝鮮のように、独裁権力がメディアの自由を奪っているということではありません。憲法でも言論の自由は保障されています。
 しかしその言論の自由を独占的に行使している巨大メディアの連合体の「記者クラブ」が、他者の言論の自由を阻害している、ということです。
 記者クラブに入らないと取材ができないのですが、弱小メディアや週刊誌、外国メディアは会員になれません。
 従って、日本では新しいニュースメディアを作ることは不可能です。こうしたことが、日本の言論の自由を著しく制限しており、ランキングの低評価につながっています。
 政治権力がメディアの自由を奪っているのではなく、メディア自身が言論の自由を奪っているという摩訶不思議な構造が浮かび上がります。
 こうした問題は、世間ではほとんど知られていません。マスコミを学ぶ学生ですら記者クラブの知識はありません。
 なぜかというと、どのメディアもこれの問題点を伝えないからです。言論の自由を寡占する記者クラブ・システムは、巨大メディアの既得権益そのものなのです。しかしその権益構造にメスが入ることはありません。
 現状では、こうした問題をいくら書いても、黙殺されるだけです。いまもまた徒労と知りつつこのブログを書いている始末です。