正気の核武装論?

日本の核武装論に世界が注目?

 北朝鮮の核実験で、核の拡散が世界の脅威になっているさ中、自民党政調会長の中川氏がテレビで話した「日本の核武装論」は、世界的な注目を集めています。
 ブッシュ大統領まで、中国の反応に言及しながら、警戒感を示しました。
 日本発のニュースが世界メディアのヘッドラインになるのは、甚だ珍しいことです。
しかし、折りも折りです。中川さんが平時にこれを語ったとしたら、妄言として無視されるだけで済んだでしょう。しかし、非常時にはとんでも無い誤解を生む。
 米国、中国、英・仏、ロシア各国は、今回の北朝鮮の核実験が核拡散をもたらすことを非常に心配しています。
 欧米の多くのメディアは、北朝鮮に続いて、日本、韓国、台湾が核武装に踏み切るかもしれない、という分析をしています。北朝鮮の核の脅威以上に、核の拡散を恐れているのです。その恐怖のシナリオに、中川発言は弾みをつけたようなものでした。
 北朝鮮がイランにミサイル18機を売り、先のミサイル発射事件の時にも、イランの人物が立ち会っていたという話が、アメリカの有力シンクタンクのレポートに出てきます。
 欧州諸国はイランが核開発することを最も恐れています。北朝鮮製のミサイルに核弾頭が搭載されると、欧州全域が核攻撃エリアになるからです。
 イランが単独で核開発すると、あと5年はかかる、という分析があります。しかし今回の北朝鮮の核実験が完全な失敗ではなく、その技術をイランが輸入すると、間もなく核兵器を持つことになります。
 そうなると、欧州全域が脅威にさらされるだけでなく、世界に核兵器が拡散してゆきます。
 被爆国であり、平和憲法を持つ日本に、世界は平和のリーダーシップを期待しています。日本が核兵器を作る能力と経済力があることは、誰しも承知しています。しかしに日本には核をもって欲しくないという期待があります。
 核を保有している超大国が、日本は持たないでくれ、というのは身勝手なようでもありますが、日本の要人の口から改めて核武装論が飛び出すと、世界にショックを与えるのです。
 言葉は瞬時に世界を駆けめぐります。
 日本の国内ジャーナリズムの中では、奇抜な発言がもてはやされるので、何をいおうと”言ったもの勝ち”、”いい得”なのですが、世界ジャーナリズムを相手にしたときは、そうはいきません。
 言葉はもっと厳正に処理され、誰の発言でも、白日のもとにさらされます。