パパラッチ考

Tshibayama2006-04-24


ダイアナ元妃が、事故死したとき、私はパリにいました。事故現場に行って取材もしました。ものすごいショックがパリの町を覆い、ダイアナの死の現場には花束の山が現れ、パリ中の花屋の花が売り切れたといいます。
 当時、事故原因はダイアナのスキャンダルを追いかけるパパラッチというタブロイド紙のせいだということになりました。
 すかさず、ル・モンド紙が「世界のパパラッチ」特集記事を掲載しました。その中に、「日本ではタブロイド紙だけでなく、一般紙までスキャンダルに向かう」とありました。さらに、「欧米のスキャンダルのターゲットは社会的強者だが、日本では市井の人や弱者が犠牲になる」と。
 強者に弱く、弱者に強い。沈みかけた船を叩け。これが日本のメディアの基本スタンスです。
しかしこれはいまに始まったことでないらしい。

 戦前、青年将校が決起したテロ、2・26事件のあと、石橋湛山は軍部にものがいえない大新聞のふがいなさを嘆く文章を書いています。「(大新聞は)強力なるものの前には筆を投げながら、弱いものに対して飽くまで追求する」。(『東洋経済新報』昭和11年3月7日)。
 そうだったのか。弱い者をいじめる。これが日本の巨大メディアの歴史的な伝統だったのかと、思い知りました。

 で、あのパパラッチ特集を書いたル・モンドの記者は、石橋湛山のこの記事を読んでいたのでしょうか? 日本のメディアは猟奇的な犯罪報道が大好き、という評価が欧米のジャーナリズム界にはあります。
確かに、毎日毎日、新聞にもテレビにも犯罪記事があふれています。そういうメディアの欲求に応ずるかのように、次々と奇妙な事件が起こっています。
関連記事は公式ホームページで。(http://www014.upp.so-net.ne.jp/mediaforum/