「風説の流布…異聞」

風説の流布」はホリエモンや永田議員の”専売特許”ではなく、古来より、わが日本文化の特質でもあります。島崎藤村作詞の唱歌『椰子の実』は、名も知らぬ遠き島より流れ来る椰子の実を歌っていますが、この椰子の実が流れ着いたところは、東海の伊良子岬のあたりだと、柳田国男が『海上の道』で書いています。
 柳田から椰子の実の漂着の伝承を聞いた藤村が、早速、詩にうたったということです。
 遠き島から流れ着いた椰子の実伝説とは、風説をもとにした寓話ですが、柳田によれば、実証の装いを凝らした文献や考古学資料よりもはるかにリアリティがあるといいます。柳田は、「日本人はどこから来たか」という日本人のルーツを考え続けたあげく、東海の海辺にたどり着いたという椰子の実に注目したのです。
 海に囲まれた島国の日本に、一番先にたどり着いて居住したのは、椰子の実と同様なルートで海上の道を漂着した南の島の人々だったのではないかと、柳田は考えています。そこから、椰子の分布地図を作成して、原日本人のイメージを推理しているわけです。
 沖縄には「ニライカナイ」の信仰がありますが、これは海の向こうから幸せが来る、という考えです。流れ着いた椰子の実は、島人にとって、宝物でもあったのです。
 日本には、海辺に漂着した椰子の実を拾ったり、譲り受けて家宝にするという民間信仰があったと柳田は語っています. (現代メディアフォーラム=2006年3月20日)


風説の流布
風説の流布」といえば、ホリエモンだけでなく、近年のマスコミの得意技でもあります。事実を取材して真実を報道するのが公器たるマスコミの社会的役割ですが、最近はとみにその力量が衰えて、「風説の流布」に深く傾斜し、情報操作に余念がないように見えます。東京拘置所の独房のモデルルームまで作って、面白おかしく”ホリエモン犯罪物語”を演出するTVワイドショーや新聞記事に至っては、その観を深くします。
 ホリエモン逮捕はあまりに突然の事件でしたが、過剰報道のわりにマスコミは犯罪の構成要件を未だにわかりやすく伝えてはいません。ホリエモン=重大犯罪人というイメージは洪水のようにあふれていますが、なぜホリエモンが逮捕され、いかなる犯罪者なのか、いまだにわからない人々がたくさんいます。
 もしもホリエモンが、もともといかがわしい人物だということがわかっていたのなら、いくら目が節穴だったとしても、自民党幹部が選挙候補として応援したはずはありません。いまになってホリエモン悪人伝説が吹き出してきた理由はなぜでしょうか。(現代メディアフォーラム=2006年3月20日)
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